08/06/01

Main


             詩

  人は考える時に言葉ナシではできません。見たもの、思ったこと、すべて言葉になる。だからウタフ。



「かえりみち」
帰るところがあるから旅ができる
きっと誰もが 帰る場所を求めて道を歩いている
止まるのが怖かったりもするし 時々誰かと一緒に歩いたりする
二人の道がひとつになった時
流れ星が天を駈ける
想いは帰る場所を見つける


「母なる大地」
音に若葉が踊り
笑顔と空が出会うこの日
静かに流れる感情で そうだ心を洗おう
風に想いを乗せて 解き放て
空が夢で覆われて 虹の架け橋見えたなら
その道信じて 歩みだそう
春風がそよぐ瞬間に
自分を信じて歩みだそう
母なる大地に懐かしい未来が覗くから
母なる大地に懐かしい未来が続くから


「旅人の運命」

降りかけた電車で交わした言葉 長い旅の一瞬のめぐり合わせ
再会を信じて乗ろうとした電車に もうアナタはいない
扉が締まり動き出した冬の冷たい雨の車窓
揺れる心の終着駅でアナタが歩いています

この前、二つの嘘をつきました
ニューヨークで交わした言葉覚えています
正確にいうと鮮明に思い出しました
でもあの頃には忘れたい記憶があって
アナタの思い出も一緒になって沈んでいました
だから心に浮かぶのに時間がかかりました

それともうひとつの大事な嘘
潔くよく握手して別れたけど
今も終着駅でアナタが振り返る夢が
シャボン玉みたいに浮かんでいます

アナタの幸せの邪魔をしないように静かに
笑いながら旅をします
また旅のどこかで


「渡り鳥」
飛び降りそうな衝動を抑え
バスに飛び乗り 改札を抜け出すとき
審判は下され 現実の荷馬車に揺れる
驚いて夢の国の 渡り鳥が銀色のレールを
なぞりながら去って行く
追い掛けるは昨日の月夜 幻想の鳥を見送って
すれ違う透明な今日
透明な今日に息をとめてどこまでも昇る
どこまでも昇って 夢の鳥に会えるとしたら
それが今の僕の旅


「ヤシの実」

かつての情熱を知る雨粒は激しく飛び散り
街灯の光をうけて線香花火のように輝いては
消えた

遠くを走る電車は音も出さず 
深海をよこぎる光る虫のように輝いていた

前を行く車のテールランプはしたいに小さくなり
旅人を乗せた船を見送る ここにいる私

かつてかつて私は波間をゆらゆら旅する小さなヤシの実

同じ太陽が昇るのを恐れては 月夜すら明るく見え
闇の深さを知ろうと 心の中をまさぐっては
耳元でささやく波の音を数えて ただただ
旅を続けるのでした

実はこんなことをしている仲間は大勢いて
流れのゆるやかな淀みのようなところで
砂漠で赤い月と踊る夢を見たり 
もうひとつの太陽が昇る場所を予測したりしているのです

やけに薄っぺらい船乗が可能性という難しいコトバを教えてくれ
波音の隙間では誰かが
「根をはらないと実ができない  根をはらないと実ができない」と
溺れそうになりながら呪文のように唱えていました

コトリに会ったのはなんとか陸に辿り着いた冬の午後のこと
コトリはどこまでも自由でありながら
冬の寒さに少し怯えて

いつしか春を一緒に待つほど仲良くなりました
コトリのさえづりに誘われて 目を開けて 恐る恐る
太陽を見てみると不思議な温かさに包まれて
毎日昇る太陽が楽しみになったのです

ヤシの実は根を下ろし コトリのために実がなるよう
太陽にお願いをしました
闇の深さを知るヤシの実にとって
太陽は常に優しく輝いたものに見えました
芽を出したヤシの実はいつしか 
コトリのさえづりを忘れるようになっていきました

太陽の眩しさが一段と強くなってきた夏の前
コトリは旅に出ると言い 優しい羽音を青空に残して
去っていきました

根をはったヤシに 再び旅をすることはできませんでした
朝 目が覚めては さえづりに耳を澄ませ
ただただ 静かな風に体を揺らします

闇と光を知るヤシの葉が 波の音を思い出しながら
コトリの帰りを待っています
「クジラの背中で体育座り」

あれだけためらっていた
扉をあけると
そこは意外に暖かかった

少しひんやりとしていた
ドアノブから手を
はなして しっかりと
カギをした

もうここへは戻らないだろうから
カギは捨てようか
もう後ずさりはしないだろうし
空を見て少し考えて
カギを握りしめた

途中このカギを必要
としている人に渡せばいい

雲はやけに白くて穏やかで
誰かがペンキで描いたに違いない

よく見ると私はひとりで
草原に風が吹くと
クジラのたわわな背中の上にいた

クジラは無邪気に
鼻から空気を吸っていた
優雅に海をすべる
彼に行き先はあるのだろうか

私はひとまずクジラの背中で
体育座りをした

すると一羽のトウゾクカモメがやってきて
「キミは空を飛べる?」
私応えて
「いや、空は飛べないよ。」
カモメ
「じゃ、泳げるんだね。」

「どうかな。多分ね。」
カモメ
「このクジラは君のことなんて知っちゃことないよ。」
「海にピッカと光るネックレス見つけたら、ボウリングボールの
中より暗い深海まで潜るよ。」

私はうるさいトウゾクカモメを追い払った
TVを消した直後のようになんとなく明るい夜空に
砕けた月が波間にプカプカ浮いていた

その一つを手にする
海の水は意外と暖かい
月のかけらに手をやると
どこまでも泳げそうな気がしてきた





「ブラジルの雨と太鼓」
 中央線は今日も混んでいた。僕は海底の水草のように身をゆだね。となりの人間を忘れようとした。気付くと自分が誰であるかも忘れていた。月に一度か二度、誰かがどこかの駅から電車に飛び込んだ。飛び込み自殺があると、駅の窓口では電車の遅れを証明する紙骨のかけらを配るみたいにばら撒いていた。僕はいつもその真っ白な骨のかけらをテーブルの上で砕いてマクドナルドのコーヒーに入れて飲んだ。誰かの死は混沌の中で形を変えて誰かの生につながっていた。眩しい朝日に照らされて魂が昇華していくかのような湯気が浮かび上がった。風が朝日を押しやった。
 夕日を溶かした川の水は、血が滲んだように赤く、やけに緩やかな流れは固まりそうで固まらないゼリーのようだった。行き場のない流れを出口のない時が支配した。やけに鋭い虫の声が僕の頭を切り裂いていった。私は最後の旅にでる。

 サンパウロは今日も雨だった。部屋には窓がない。ニオイでわかる。沸き上がる土地の記憶。テレビが一人、喋っていた。
 豊かさというモノを求めて、日本人がやってきたのは遙か昔。荒れ果てた農地を耕し、学校を作り、町を作った。皮肉なことに彼らも彼らの子孫も日本の豊かさというモノを象徴した高度経済成長期とバブルを経験していない。そのかわり、戦争で焼け野原になることもなかった。昭和初期がつつがなく続いていた。小さな商店が軒を連ね、店主と買い物客が世間話をしている。馴染みの登場人物の平和でありふれた毎日を描いたアニメシリーズを見ているようだった。ここだけで完結した時間が流れていることを遠くに浮かぶビル群が教えてくれた。流れのない深い淀みのような場所だ。再び予算不足のドラマのような大粒な雨が降ってきた。トタンの上で煮立った雨粒がはじけ飛んだ。深い緑の縁を歩く水滴は、涙のようにこぼれ、すべての物語が始まった。通りを歩いていた人は生まれて初めて経験したことのように、右往左往している。どこか遊んでいるようにも見える。小鳥は戦場を逃げ迷う兵士のように、電線を往来していた。どこか諦めたようにも見える。車が水しぶきを上げながら、曲がり角をまがる。斬新な車のコマーシャルのようにも見える。コーヒースタンドに駆け込んだ男は、甘めのコーヒーを口に含んで、見事に苦い顔をした。雨の味を噛みしめたようにも見える。雨は緩慢な時を送る人々への天罰のようでもあり、完結した時に生きる人々に与えられたご褒美のようでもある。混乱を見届けた雨は遊びに飽きた子供のように大人しくなった。止み方が、誰かが蛇口を閉めているようにわざとらしい。通りにそびえる真っ赤な鳥居の横には、濡らされたキョウチクトウの花びらが燃えていた。店主が仕舞い込んだ商品を軒先に並べる。ときより水泳の息継ぎのように、ちらりと顔を空に向けた。うなる車の音が辺りを支配すると、町は再び緩慢な流れに身を置いた。


サルバドールは今日も揺れていた。昼も夜もなく、太鼓を持った隊列は生きていることを問いに押し寄せた。海は体を揺らし、波間を跳ねる無数の光は、湿った黒い土の上を割れた鏡のように輝いていた。風はマシンガンに脅されて、この地を去ろうとしていた。抜け殻の街に、人だけが残ると、一斉射撃が始まった。静寂は真っ先に殺された。隊列は通りを進む。鰯の群のような人だかりを引き連れて。気付くと通りは、うごめく群の住みかとなった。街は興奮に支配され、時よりの暴力が吹き出した。暴力は群を襲う鯨のように、一部の人間を抹殺した。群のバランスが崩れ、興奮が混乱に変わる。となりの人間がスローモーションで倒れていく。狂った太鼓の悲鳴と歓声が倒れていく者を踏みつけた。はぐれた獲物を狙う目が不気味に笑っている。隊列が丘を上がっていく。静かな波の音のように優しく夜空を叩いていた。海は体を揺らし、波間を跳ねる無数の光が、湿った土の上を走る木漏れ日のように輝いていた。驚いた風は、この地を去ろうとしていた。哀しき熱帯で旅が終わる。




               「NYの空」
            一羽の大きな鳥が
         青く冷たく澄み渡った大気を
        かき混ぜるように飛び立っていった

        無数の星条旗は取り込まれるのを
        待つ洗濯物のように揺れていた

           やがて少女の咳きを誘った
          そえられる母の手が朝靄を揺らす

             一羽の大きな鳥は
             青空を旋回していた



「メトロ」

壁にもたれ 流しのサックスを聴きながら
カップからこぼれ落ちる言葉を拾う



「オドリバ」
チグハグニアルイテキタカイダンノオドリバデ キミトデアウ
コタエノハイッタフウトウヲ ムネノスキマニサシコンデ
ウカビアガルココロノユレハ ヤキツケラレタシャシンノヨウ
ヒジョウグチノヒカリガ ヤケニココチイイモノニミエタ
トビラノスキマカラハ オボエノアルツメタイクウキガ
ハイリコモウトシテイタ
キミノクレタフウトウニテヲヤルト ズイブンタクサンノトキガナレタ
ソロソロイカナイト キモモワタシモ














「冬のハーレム」

午前三時の地下鉄
レールが不気味に輝いている
スチームの効いた部屋でキミは
かつての輝く太陽を抱いて寝ているのだろうか

月のように冷たい太陽が昇る街
楽園から来た天使には寒すぎる場所
ここに住むとヒトは天使も楽園も見えなくなる
肩につもるキミの羽をうっとおしそうにはらう
誰もキミの暖かさがわからない
舞いおりるキミを抱きしめた
確かにキミは暖かかった



「時のレコード」

時のレコードをなめる針のような僕ら
周回の間隔少しずつ減らしていく
見えないカーブをすすんでいく
そのすすみ方がわかる時
新しいサイドにとびうつる
何もかもはじめから



「都会」
見渡す限りのビルの群れ
この絵の中にいったいどれだけの
日常が詰まっているのか
かつて、ヒーローや怪獣たちは
この上で転げあっていた
いつしか、ヒーローも怪獣も
いなくなっていた


「偶然の必然」
22歳になった雨の夜
闇夜に溶け出した太陽が
優しくあなたを照らしていた
フロントガラスを走る流れ星に
もう何も失わないと誓った

あなたに会えた偶然の必然に
感謝します